vol.43


いろんなことにたじろぎながらも、
たらたらといつまでも走ることができれば
最高ではないだろうか?


 ガラス窓から射し込む師走の太陽は、過ぎ去った夏と遠い春を想わせる。
 スキー板にワックスをかけ、迫り来るスキーシーズンに向けて準備万端とばかりに、独り鼻の穴を膨らませて張り切っていたのだが、雪が降らない…。何となく侘びしくたたずむ我がスキー板を眺めて「もう少しだなぁ」とつぶやいて、引き戸を開け玄関から空を見上げる。何とも素晴らしく青く晴れ渡った冬空に大満足。何かが無くなれば、何かが訪れる。そんな感じが最高。
 最高と唸ってばかりもいられない。しかしスキーにも行けない自分は、教習所へと行きました。そう、大型バイクの免許取得、真っ最中。白いジェット型のヘルメットをかぶり、ゼッケンをかぶり、肘と膝にプロテクターを装着。最後に手袋を両手にはめて、教習準備完了。「ハーイ、伊藤さん、こちらへね、御願いします」と教官の言葉に、「よろしくお願いいたします」と礼儀正しく挨拶する自分。決して権威主義者ではありませんが、プロの教官に対し、プロの教習生として礼を尽くしたいという気持ちがあります。「はーい、ニーグリップね。膝が開いてますよ」「視線ね、視線」などと厳しい指摘を受けながら、慣れない750ccのバイクにまたがり、フラフラと一本橋を渡る自分。一本橋の後はデコボコ道に坂道、そして細い路地に広い直線道路と、人生劇場さながらのさまざまな道を走る自分。「教官!」という響きに堀ちえみの顔をつい思い出してしまう年齢ですが、やはりバイクの危険と背中合わせな開放感が、たまらなく嬉しい。
 急な雨で濡れた路面での急ブレーキ練習にたじろぐ自分。いろんなことにたじろぎながらも、たらたらといつまでも走ることができれば最高ではないだろうか? 走りたいと思った時に走り出せることに密かに感謝しつつも、背中に汗をかきながら教習を受ける自分は、教習生のプロだろうか? 本物のプロは、いつだって、誰だって格好良いのである。
 今年も残り後少し。いろんなことがありましたが、自分にとって不必要なことは一つも無かったと思っています。
今年一年ありがとうございました。そして、来年もよろしくお願いいたします。
Pma。




KEMURI 伊藤ふみお インタビュー

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