vol.42


俺は泣かずに 前へと進むのである。

 初秋は何を持ち去り、何をもたらしたのだろうか?
 先日、長い間、袖を通していなかった革ジャンを着用してみた。Shottのライダースジャケットで、“ワンスター”と呼ばれている、肩のストラップに星が付いたやつである。誰が見ているわけでもないのだが、照れ臭い。鏡に映った自分を自分に見られているのが気恥ずかしいのである。同じバンドのツダノリアキが革ジャンをよく着ているので引っぱり出してみたものの、なんだか外に着ていくには理由が足りない。釈然としないのである…。
 思い起こせば10年以上前、二輪、バイクが大好きだった自分は、「ハイホー!」と荒馬を手なずけたクリント・イーストウッドのように得意顔で、どこへ行くにもバイクに跨り、風を受けながら走っていた。16才の時に観た『Easy Rider』はあまりにも鮮烈だったが、古着のジーンズにネルシャツを揃えるのが精一杯で、バイクや革ジャンには手が届かなかった。19才で、エンジニアブーツと革ジャンを手に入れたが、バイクは高嶺の花だった。25才の時、二輪中型免許を取り、念願のバイクを手に入れ、気分はキャプテン・アメリカであり、ビリーであり、マーロン・ブランドだった。革ジャンを着て、ハーレー風のカスタムをしたホンダのバイクに跨り、一人いろいろな場所へと走っていった。甲州街道の排ガスには閉口したが、それ以上に風を顔に受けて走るのが楽しくて仕方がなかった。バイクに乗っているときの“独り”な感じが良かった。  大型二輪免許を取るかなぁ…と。ハーレーに乗りたいなぁ…と。思い立ったが吉日! 20年越しの思いを成就させるべく、教習所へ行くことが決定! 革ジャン着用も間近。良いじゃない、この感じ。しかし“ワイルドで行こう”は、いかがなモノか? 限りなく“マイルド”で参るド…。
 いつかどこかで必ず自分を待ち受けている“死”とご対面 するとき、やり残したことが少ない感じがよろしい。「アイツは後悔の少ない人生を生き切った」と自分は言いたい、言われたい。
 秋の午後、鈍い光りに照らされて青紫色に輝く体を膨らませて「アホー、アホー」とカラス鳴く。俺は泣かずに前へと進むのである。



KEMURI 伊藤ふみお インタビュー

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※SAへのバンド出演依頼 、タイセイ(SA)含むBoo Zee LoungeクルーへのDJ出演依頼、 ブライアン・バートンルイスへのDJまたはMC出演依頼は、familiesまで。   ※本サイトへのご意見、ご感想はこちらへ