vol.37


汚れて、まみれて、磨り減って、捨てた靴の
ありがたさを思い出させるのは
裸足に突き刺さったガラス片なのだろうな 。


 猫の額ほどの庭ができた。
 コンクリートを剥がし、土を入れ替え、植木屋さんに樹を植えてもらった。
 “坪庭”という言葉がぴったりな小さな庭に、モミジとハナミヅキを植えただけだが、なかなか感じの良い、派手さはないが気持ちの良い庭になった。興味深いモノで、次の日には小鳥が訪れていた。今までは図々しい黒カラスくらいしか来なかった家に、家の猫の存在に気づくとすぐに飛び立ってしまうくらいの、小さいが好奇心旺盛な小鳥が来るようになった。いまだカラリとした空気漂う春の陽射しを浴びながら、「俺は年寄りではないのでオマエに餌をやったりはしないぞ、小鳥よ。来るなら勝手にいらっしゃい。来るモノは拒まん」と囁く俺。
 最近加入したケーブルチャンネルの音楽番組からは、冗談としか思えないような音楽ばかりが溢れ出してくる。思い出すのは10数年前の事。サッカー青年が、どういうわけだか音楽の道を目指し、頼るモノも何もなく負の風が吹き荒れる中を漕ぎだした時(と言うと格好良すぎるが)、幸か不幸かバブル経済が破綻し、“バンドブーム”が終焉するという大波に襲われた。バブル経済もバンドブームも、あり得ないモノがなぜかあり得ていた摩訶不思議な現象だったが、当時、自分を含めた多くの人がその恩恵にあずかり、そして時代を楽しんでいたように思う。
 記憶では、こんな浮かれた世の中で浮かれた生き方はしないという真摯な姿勢で生きていた奴よりも、冗談のような世の中を冗談のように生きていた奴のほうが多かった。ふと気づけば今も昔も、世の中なんと冗談だらけか。さて、同じ冗談ならば良い冗談のほうがありがたいのも確かだなとうなずき、俺はテレビを消した。
 一生懸命なものほど冗談に見えるのも神の悪戯か? 暗い画面 が奏でる実に豊かな静寂が、若葉を濡らす雨音を部屋へ運んできた。「雨ざらしならぬ れるがいいさ…」か。汚れて、まみれて、磨り減って、捨てた靴のありがたさを思い出させるのは、裸足に突き刺さったガラス片なのだろうな。
 雷鳥の羽も、こげ茶色に色づき始めた今日、この頃…。


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※SAへのバンド出演依頼 、タイセイ(SA)含むBoo Zee LoungeクルーへのDJ出演依頼、 ブライアン・バートンルイスへのDJまたはMC出演依頼は、familiesまで。   ※本サイトへのご意見、ご感想はこちらへ