vol.36


 
花見客で賑わっていたのが嘘のように静まり返った公園で、遅咲きの桜がひっそりと咲いている。
 青葉眼に眩しい関越自動車道を北に向かって爆走。約二時間半の激走の末、妙高高原に到着。そして車内で寝袋にくるまり就寝。明日はスキー登山だ、登山。
 晴れ渡った空の下、六時半起床。朝一番で人もまばらなスキー場の最上部から、山へと入っていく。季節柄、軽装のスキーヤーやスノーボーダー、軽快な流行歌から離れて山へと入っていくときの不安と喜びの入り交じった感覚が良し。雪崩に巻き込まれないだろうか、転んで怪我をしないだろうか、不安は尽きない。尽きないのだが、白くこんもりと雪を纏った静かな山には、いろいろな喜びがある。常に不安がつきまとう喜びがある。山には、東京では吸うことのできない綺麗な空気があり、東京では得ることのない静寂がある。  何という矛盾か? 東京にいるときは、必要以上に洋服を買ってみたり、聞いたことのないような音楽を手に入れたり、便利な電気製品を揃えたりすることに喜びを見いだす癖に、モノが大好きで必要以上にモノを持ちたがる癖に、山に来ると簡素であること、静寂であることの楽しさを喜ぶのである。筋が通 っていない自分。安定した電力が供給されている場所と電気の無い場所で、ジキルとハイドのように二つの顔を持ち、生活をしている自分。しょうがない、そんなすべてが自分。あーあ、と見上げた空の向こうには宗教、習慣、そして自然環境、すべてがここと違う世界、違う人間たちがいる。
 スキー場からわずか数時間離れただけの場所も、また別 世界である。自然の厳しさ、潜む危険をビリビリと感じ、知恵と技術を駆使して遊び、人間がいかに脆く弱いかを実感すると、「口が裂けても“自然に優しく…”なんて言えねぇや」と思う。矛盾に満ち溢れた自分を持て余して上等。むしろ「平和」や「自然保護」を唱えれば善人でいられるかのように思っている卑怯な輩には、絶対になりたくない。
 山桜の花は、いまだ蕾の中である。





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