vol.29


 
熱く湿った夏、真っ盛り。それと対照的に、色白な自分。それもまた夏。
 アロハシャツに通す袖も何となく消極的で、今年は例年と何かノリが違うぞ、グルーヴ感が違うぞと思っていたら、数年ぶりに夏風邪の来襲に遭う。発熱、悪寒、吐き気、関節痛その他までおまけで付いてくるくらい立派なヤツで、すべてが薄い黄色に見えた。コーヒーも牛乳も同じ味がして切ない気持ちになり、自暴自棄状態直前に、点滴数本と強力な解熱剤のおかげで何とか乗り切るも、急激な薬物投下による治療にはそれなりの副作用がつきもので、非常に気怠い日々を送っている。現在“甘い”“塩辛い”のみ判別 可能で、嗅覚は犬の10,000分の1以下状態である。
 この夏一番の収穫は、フジロックフェスティバルで井上陽水氏のライヴを見られたことだった。古今東西のいわゆる“ロック”が混在しているフジロックフェスティバルだが、そんな中で一際ロックしていたのは陽水氏だった。衣服や態度のみロックしている輩は、俺の体内で暴れているウィルスの数ほどいるだろうが、唄であんなにロックしている人はいなかった。もともと才能がある人物が、自分の才能と上手に付き合い続けた結果 がこれだという実例を目前で披露され、その見事さに唖然とした。人にはいろいろな役割があり、そのどれもが重要であること、刻一刻と変化する状況の中で、常に注意を払って自分の役割と対峙していくことの重要性を再認識した。
 自分自身、いろいろな目的意識を持って今日まで音楽をやってきたが、今日という日までの経験など、長い道のりの中のほんの一歩ほどの距離、というか重みに過ぎないのではないかと思う。いたずらに長い時間を音楽業界で過ごしているだけの、長老ヅラした低脳どもに媚びへつらっている人間を見ていると、心底哀れな気持ちになるが、それ以上に、鼻の穴を広げてふんぞり返るのみの馬鹿年寄りにはならぬ よう、心がけたいものだ。
 アメリカで“ロック”が誕生してから、約50年が過ぎようとしている。日本で欧米の複製ではない“ロック”が成立するまで、あとどれくらいの時間がかかるのだろうか?





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※SAへのバンド出演依頼 、タイセイ(SA)含むBoo Zee LoungeクルーへのDJ出演依頼、 ブライアン・バートンルイスへのDJまたはMC出演依頼は、familiesまで。   ※本サイトへのご意見、ご感想はこちらへ