vol.22


 
恐ろしいくらいに光り輝いていた大晦日の月とは対照的に、柔らかく穏やかな陽射しに包まれ、新年が静かに訪れた。
 新年早々、スキーを担いで新潟県へと足を伸ばしてきた。年末からの寒気団来襲を見逃さずに山へと向かっていったスキー仲間たちのあとを追うように、時速130km平均で高速道路をひた走った。スタッドレスタイヤを着用したふみお号は、雪降る中チェーンを装着する人々を後目に、ガンガン走ったのである。「もう粉雪には飽きました」とか「昨日が最高なパウダーだったんだよねぇ」とうそぶく仲間にワンパンチを喰らわせて、僕はバフバフパウダーの中に突入したのである。
 華麗なテレマークターンを決めて35°のパウダー斜面 を滑り降りるはずだったのだが、気がつけば頭から雪に突っ込んで「やはりダイブが好きなんだねぇ」と笑われる初滑りとなってしまった。激沈しつつも口元には微笑みを浮かべている僕は、大変怪しげで近寄り難かったとは思うが、そんなことは気にしないの。いいの、いいの。上手に滑れるのは最高だけど、楽しく滑るのが極上なの。こうして僕は極上を追求していくことになった。
 友人の家に転がり込むと、生後2ヶ月の真っ白い子猫が出迎えてくれた。彼の名前は波平といい、猫は炬燵で丸くなるはずの大雪の日に、犬のように大喜びして庭を駆け回っていた。好奇心がそのまま猫の毛皮を着たような波平は、家中駆けずり回り、メシをくれと言って鳴き、メシをたらふく食べ、そしてゴロゴロと喉をならしながら上機嫌で眠りについた。滑って、喰って、笑って、眠る我々と、同じじゃないか。ほんの少しの自由さを求め、安定を少しだけ放棄し、踵を解放したスキーを履いて野山を歩き、滑る。寒いだけの冬が、これであつくなった。僕たちはこれからも何かを捨て、何かを得ていくのだろう。
 雪は静かに、そして、図々しく降り積もり、人間が一生懸命つくりあげたものを遠慮なく覆い隠した。
 皆さん、本年もよろしくお願いいたします。





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