| |

 

夏と言えばフジ・ロックと言えるほどまでに重要な存在となったのが、このフェスティバル。そのメインステージで、昨年、祭りの最後を飾るように圧倒的な演奏を見せてくれたのがソウル・フラワー・ユニオン(以下SFU)だった。彼らが登場したのは、すでに主要ステージでの演奏が終わり、ヘッドライナーだったプライマル・スクリームも姿を消した後。が、SFUの前には、まだ軽く1万人以上はいただろうオーディエンスに、家路へ急ぐ人はほとんど見かけることはなかった。それどころか、雑多な音楽の要素をたくましく飲み込みながら、アジアの中にある日本にしっかと根を下ろした彼らの“音頭”がオーディエンスを熱狂の渦に巻き込んでいったのが、鮮明な記憶として多くの人たちに残っているはずだ。
一生懸命やっている感じが、俺らが長田神社で
イベントをやろうとしている姿勢と同じやった
“下を向いて涙がこぼれるままに歩く、ひとりぼっちじゃなかった夜”
と、中川敬の口から出たそんな歌の一節が後々までに語られるほど、去年のフジ・ロックを象徴していたのがSFUだった。
「いやぁ、楽しかったよ。おもろいもんやってんなって感じやね。レッド・マーキー(主要ステージのひとつ)に、ずっと朝までおったしね。二日連続で…」
この年、初めてのフジ・ロック出演となった中川敬は、そう言いながらこのフェスティバルを振り返っていた。
「それまでは、あまり興味なかったからね。周りが騒いでるにもかかわらず、SFUは呼ばれないわけやん。だから、つまらないイベントやと思うててん。『ミュージック・マガジン』から続いている、『クロス・ビート』とかの洋楽好きがやっとんねんな。けど、俺らには関係ない。俺らには寿町がある、釜山がある…。ほんまにそう思ってたよ。俺らは呼ばんやろうな。どうせボアダムスとか少年ナイフとか、君らはそんなんが好きなんやろ…“お前らにわかるかぁ”みたいなところはあったよね。
けど、“あ、呼んだぁ!”って感じで…。まぁ、そんな偏った見方をしていたね、俺は。でも、ホント、面白いと思ったよ。みんなが一生懸命やっている感じというのは、俺らが長田神社でイベントをやろうとしている姿勢と、まったく同じやったからね」
と、フジ・ロックに関して話し出した言葉も彼らしい。といって、それだけで止まらない。同時に、彼はこんな注文も付けている。
「ただ、片方で思ったのは、もっと世界中の音楽を集めればいいのになとは思ったな。なんでこんなに英米だけに偏ってるの? 何かがわかっているようで、全然わかっていないような…。あるいは、わかっていても勇気がないのか…。今やったらタラフとか、ドナル・バンドでもチーフタンズでもいいやん、マニアックなものでなくてもいいから、そういうのを呼んでほしいよね。できると思うで」
無理をすれば不可能ではないとは思うが、まだ大規模な野外コンサート的な印象でしか捉えられていないのが、このフェスティバル。充分にその意味や魅力を認識されていないというところが、その理由なのだろう。主催者もそのあたりをどこかに求めているのは、その経歴からも容易に想像できるのだ。
ユニオンのメンバーで、どっちもの曲をやろうかと思うて。
まぁ言うたらベスト・オブ・ソウル・フラワーや
そのステージで中川敬が言った言葉が印象的だった。
「“非日常から日常に戻れない馬鹿が残っとるなぁ。俺らもそうです…(笑)”みたいなことを言うたと思うんや。難しいところやね、祭りというのは。権力のガス抜きという要素も昔からあるわけで…。それも、ないよりはあったほうがいいし…。難しくて結論はないけど、やっていくしかないんやろうな。それぞれ思い立った奴らが、いろんなとこでいっぱい祭りを起こしていくしかないというか」
その“祭り”に、今年も彼らの姿を見ることができる。といっても、バンドの名前は“ソウル・フラワー・モノノケ・サミット”。これは、いかなるものなのか…。
「ハッハッハ…。いやぁ、実はモノノケで依頼が来てんけどね、大熊亘、クラリネットがいないねんね。で、梅津さんとかフィドルの太田さんとか連絡してんけど、全然スケジュールがダメで…。実は、モノノケではできません。でも、ユニオンでは(今年は)つらいって言われて…。とりあえずユニオンのメンバーで、どっちもの曲をやろうかと思うて。まぁ、言うたらベスト・オブ・ソウル・フラワーや」
ということは、アコースティックベースでやるのかという質問に、首を横に振って、こう話し続けていた。
「ま、三線(さんしん)も弾くけど。俺、モノノケの曲は三線じゃないとダメやから。で、いつもの5人に(内海)洋子ちゃん入れて、チンドン太鼓をがんがん入れて…。山口君(ヒートウェイヴ)にはギターで入ってもらうし…。だから、俺らにとっても、初めての実験やね。ユニオンとモノノケがやっているレベルソングをとりあえず混ぜて…。まぁ、いつかはそれをやりたかったからね。7月22日から練習を始めるねんけど、そこが来ないと、どういうものになるかわからない…。『がんばろう』から『インターナショナル』から『平和に生きる権利』…。とにかくやってみようという感じやね。モノノケの曲のときに、ドラムのコーキがどんなアレンジをしてくるのか…。今の段階では全然わからないものね。ホント、そんな感じ。だからバンド名も、(最初に間違って発表された)ソウル・フラワー・ユニオン・モノノケ・サミットでええねん(笑)」
そんな実験的な展開も大いに楽しみだし、フェスティバルならではのジャムセッションへの期待も大きい。今年は、中川敬や山口洋とも仲のいい、アイルランドのホットハウス・フラワーズが出演することが決まっている。両方のミュージシャンがそれぞれのステージに乱入して、セッション的な展開に発展する可能性も否定できないのだ。
一方で、神戸の長田を中心に、電気もないところで演奏を続けるモノノケ・サミットがステージから飛び出して、大自然に囲まれた苗場にあるフジ・ロックの会場で、3日間に渡ってゲリラ的に演奏してくれれば、どれほど素晴らしかっただろうかとも思う。
「それやったら良かったね。とりあえずは人の多いところがいいねぇ。俺らやったら、レッド・マーキーのど真ん中でやるやろうな、まずは(笑)。早めに言ってくれたら、今からでもスケジュール押さえるから、全員の。来年、しようか(笑)?」
来年そうなれば、また大きな噂になると思うのだが、おそらく、今年もソウル・フラワーのパワーがフジ・ロックで証明されることは間違いないだろう。
|
 
|
|