が、ケムリは何も変わらなかった。どれほど小さな小屋だろうが、6人のメンバーから放たれているエネルギーは、いつも100%以上。逆に言えば、目の前で汗を飛び散らかしながら演奏する彼らに、大きな小屋では決して体験することができないライヴの意味を感じることができたのかもしれない。
「いやぁ、小屋の前に来たときにはびっくりしましたけど…。なんかアメリカみたいですよね。倉庫を改造したみたいな、こんなライヴハウスがよくあるんですよ。フランスでも、そんなのありましたよ。野原の真ん中にぽつんとあって、こんなところに人が来るのかなと思ってたら、やっぱり全然来なかった(笑)」
と、フミオが語ったのは、帯広のライヴの次に向かった北見のオニオンハウス。タマネギの産地だというここで、その倉庫を改造して作ったライヴハウスでのことだ。なんでも人口は10万人足らずだというのだが、フランスとは違って、この小屋がぱんぱんに膨れ上がったかのように、目一杯の人で埋まったのが当日のライヴ。ステージの大きさは猫の額程度で、ドアを開ければすぐに外に出られるという、大都市の常識では考えられないほどの作りで、もちろん、客に与えられたスペースも狭い。が、そこにやって来たオーディエンスの熱気はことのほか熱く、そのおかげで異常なまでの湿気が小屋を包み込んでいる。
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「照明や音響とか機材は、東京なんかと全然違うし…。それで同じチケットの値段というのは、どうなんだろうって思うこともありますけど、正直言って、この小屋でのライヴは絶対に忘れないでしょうね。だって、本当に音楽が好きだから、ここまでできるんですよ」
なんでも、この小屋を造ったのはオーナー本人。いわば手作りの小屋なのだ。それだけではなく、このライヴを作ったのも地元の若者たちだと聞いている。かつて彼らが、イベントに出演してほしいと打診してきたことがあり、そのときは不可能だったのだが、“ツアーだったら立ち寄れる”ということで、この日のライヴが実現しているのだ。
オーディエンスの汗でスチームの煙がオーディエンスを包み込み、そのおかげで文字通
り水滴が流れるように撮影中のカメラを濡らす。家庭用のエアコンひとつしかない小屋から換気扇で押し出された熱気は、まるで火事の煙のように壁に作られた穴から吹き出している。そして、ライヴが終わると、そんな煙の中から抜け出るようにオーディエンスが外に飛び出してくる。と言っても、すぐに帰路に就く人は少なくて、汗に濡れたTシャツから湯気を立ち上らせながら外でメンバーを待っていたり、グッズの購入に列を作ったり…。まだ冬には一足早いというのに、内地の人間だったら震えるほどの寒さの中で見かけたのが、こんな光景だった。
面白いのは、それから数日後の札幌公演。このときのライヴをオーガナイズした若者たちが「いやぁ、あのときはセキュリティガードをしていて全然ライヴ見られなかったんですよ」と言いながら、会場に顔を出している。一方、帯広や旭川でも地元のバンドやファンとつながりが生まれ、それが結果
として“千嘉千涙【senka-senrui】”ツアー終了後の、1/27に行われた札幌でのイベント参加につながっていくのだ。
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