どれほどの涙と喜びを積み上げてきたのか、結成から5年目を迎えたケムリの、スタジオ録音としては3枚目となるアルバムは『千嘉千涙【senka-senrui】』と名付けられていた。おそらく、その涙の一粒は苦楽をともにしたメンバーが抜けてしまったことだったろうし、喜びの一粒はケムリが今のメンバーでしかケムリではあり得ないことを確認できたことじゃなかったろうか…。と、勝手に決め込んでいるのだが、だからこそ、彼らが自ら作り始めた雑誌『【東風】COTi』の表紙には、“コチとは はじまりのことです。”と記されているのだとも思っている。

 同時に、その喜びや涙には数多くの人々との出会いや別れもあったはずだ。長期間に渡るアメリカツアーのあとにレコーディングされた『77days』には、それを歌った「Kanasimiyo」という曲も含まれている。  あれから、どれほどライヴを繰り返してきたか…。ファンならずとも、噂には聞いているだろう。この『千嘉千涙【senka-senrui】』のレコーディングに入るまで、2年間に3回に渡って大規模なツアーを続け、無数とも言えるファンと、時間と空間を共有していたのだ。

 そして、満を持して発表された『千嘉千涙【senka-senrui】』とともに始まったのが、4ヶ月にも及ぶツアーだった。まずは東名阪の中規模クラスの小屋を回り、ついで彼らが目指したのは小さなライヴハウスの数々。北海道の旭川や北見から、南は沖縄まで、そのツアーリストに加えられていた小屋の1/3は、彼らが初めて訪ねることになった町にあった。

「これまでは、僕らを見に、わざわざみんなに来てもらっていたんですよね。でも今度は、僕らが彼らを訪ねていこう…それだけですよ。そりゃ会場は小さいし、お金もかかるかもしれないけど、もう数字だとか金だとか、そんなことどうでもいいんですよ」

 そんな思いを込めて始まったツアーでもっとも興味深かったのは、彼らが向かった小さな町の小さなライヴハウス。チケット発売開始とともに争奪戦となって即完する都会ではなく、おそらく、どんな雑誌も取材なんてしない地方でのケムリだった。だからこそ、北海道や中国地方の彼らに同行取材したことになる。