僕がピロウズファンになってから、かれこれ4年くらい経つ(ちなみに去年は、ピロウズのライヴで年を越した)。そのころは、まさかインタビューをするなんて思ってもみなかったのだが、今回その機会が与えられた。ただ、彼らの音楽が好きなだけで、今まで、ほかのインタビューもほとんど読んでいなかったし、まったく歌から想像するものしかなかった中での、今回のインタビュー。山中さわおは、僕の想像通 りの人であった。そして、同じような感覚を音楽に対して持っているのだと思い、とても嬉しかった。インタビューとしては少し長いが、ぜひ読んでほしい。
取材・文●塚越淳一



■普通にかっこいいと思うものが、もう残ってなかったりする。
■だから、したいことをして、似合ってりゃーいいんだ

●僕は、この雑誌業界みたいのに入って1年ちょっとしか経ってないんですけど、その前からピロウズはファンだったんです。
「あ、ほんとですか?」

●ちょうど97年くらいのとき。『Please,Mr.Lostman』からですね。ちょうどレンタル屋さんで貸し出してて、ジャケ借りしたんですけど。
「ははははは(笑)。買いじゃないんだ」

●はい(笑)。それで一発で気に入って、それからずっとアルバムを買っていたんですけど。今回ちょっと間が空きましたよね。ベストアルバムが出たこともあったと思うんですけど。

「そうですね」

●勢い的には、ガンガン曲ができてるっぽかったんですけど、この期間中もずっと曲はできていましたか?
「前のアルバムから2年ぶりと言いつつ、実は、マキシやオムニバスとかで9曲くらい出してるんだよね。だから、やってる側は暇な時期はまったくないわけで、普通 に曲作ってリリースもしてツアーもやってたから、空いたという感じはまったくないですよ」

●じゃあ、曲はずっと調子良くできてる感じなんですか。
「そうだね。どう返事していいか困るのは、たぶん僕は人よりもものすごく曲を作るので、僕にとっては今が一番書いてるって感じではないんですよ。ちょっと落ち着いてるくらい。だけど、そう答えるとみんながイメージするものとは違うな…。やっぱり書いてるとは思うよ。このアルバム出しちゃっても、まだ普通 に15曲くらいあるから。でもものすごい勢いで書くときは書くんで、自分の中ではちょっと落ち着いてる」

●じゃあCDに入れるときは、そういういろいろある曲群の中から、これにしようとか決める感じ?

「あの、わかりやすく言うと歌詞ができた順番なんですよ。曲を作った順番は、本当にどうでもよくて。何年も歌詞が乗らない曲もあるし、歌詞は乗ったんだけど、何かピロウズサウンドとして“これは次回でいいや”って、先送りになっちゃう曲もある。でも、それがあるとき“今だ!”って思った経験は、何度もあるんだけどね」

●では、今回のアルバムは、どんな感じの曲が集まったんでしょうか。
「アルバムの全体像とかを考えたりしないんですよ。だから、気分的には毎回毎回シングルコンピレーションアルバムを作ってるようなもんで。ま〜そうは言っても、脇役がいて初めて主役が引き立つことも知ってる。だから、英詞の曲(12曲目『Calvero』)なんかは、もちろん脇役的なものと捉えてやってるけど。 ただ、すべてに関してピロウズは、自分のやる行動に自分が飽きないで楽しむ習慣があるので、どんな曲をやるかは、前後のことが多少影響するんだよね。でもそれは、あとからインタビューとか受けてるうちにたぶんそうだろう、とわかっていくことであって、やってるときは、よくわかってないんだけどね。ピロウズも13年目だし、ずーっと3コードのロックンロールをやってるわけではないので、そういう意味では、結果 的に今回、今までやってないことかなっていう要素は入ってるなとは思ってるけど。でも、それは毎回っていったら毎回なんだよね(笑)」

●毎回新しい要素を盛り込みつつ。
「そうだね、新曲だからね。でも、“新しい要素を取り入れたんだよ!”ってことが売りなつもりはないわけ。そうじゃなくて、さりげなく、ぼんやりとこう、スパイスみたいなもんだよね」

●今回で言ったら、それはどこになるんでしょう?

「たとえば『Smile』の展開が激しくなったときに、“クタバレニンゲンドモ”というところで、ありえない、絶対普通 では歌わないもの(“ニンゲンドモ”という歌詞の部分のメロディがありえないような変化を見せることを指してます)をババッと入れたのね。それが、この曲が持ってる毒々しさをさらに強調させて、わかりやすいなと思った。でも、そこが売りの曲じゃないのよ! だからそういふうに、何かしらはやってはいるんだよね」

●そうですね。僕は、ピロウズの作るメロディには、信頼しきっているところがあったんですけど、「Smile」のあのメロディを崩したところは、かなり驚きでしたね。
「あと、世間的に新しいこととか、おもしろいこととかじゃなくて、僕らがやってなかったこととして、『この世の果 てまで』の6/8拍子のリズム。スタンダードなんだけど、やったことがなかったということと、『Calvero』みたいな2ビートの曲も実はやったことがなくて。そういう意味では、自分ら的にスパイスを盛り込んでる。でもそれは、以前ならおもしろいと思わなかったかもしれない、同じ曲でもね」

●とにかく自分たちが、まず楽しむという。

「そうなってるね。だから、ピロウズは流れの中でずっと続けていくバンドだから、前回こうだったから、今回はコレっていうのはあるかな。シングルを選ぶときもそうで、今一番いいものをとか思いたいけれども、前の作品がすごく影響する。たとえば『NO SELF CONTROL』のような、洋楽とかをあんまり聴かない人には、かなりストレンジな曲を出した次は、なんとなく自然に『インスタントミュージック』に行きたいとか、『CARNIVAL』のあとは『RUSH』とか。逆に、そういうのが来たから『Ride on shooting star』のあとは『I think I can』で同じのをやってみようかとか。絶対そういう前後関係は影響するんだよね」

●なるほど(笑)。じゃあもう、長いこと続くっていうのが前提にあった上で、これはあとでもいいと思えちゃうわけですね。
「そうそうそう、そういうこと。特にピロウズは、種を蒔く作業をしっかりしたってことなんだよね。種を蒔いたら、ちゃんと育てて芽を出そうよと、それからしっかり育てれば花が咲くから地道に頑張ろうよってことなんだよね。レコード会社の人は、“花、花! 早く花!”って言うんだけど、それは無理だっていう。そういうタイプのバンドもいるけど、僕らはたぶんそれは向いてないから。だから、じっくり植える作業さえしてくれれば、ちゃんと誰も見たことのない花を咲かせますよ、だから待ってくれと。で、『Please,Mr.Lostman』から、種を植えていったんだよね。それで、今日のように、あのアルバムから好きになってくれた人との出会いがある。そういうのを、あとで感じることがすごく多くて。“無駄 じゃなかったんだな”って、いつも思うんだよね。僕たち世紀末に解散するとか決めてたバンドじゃないので、続いていくものだから、そういうスタンスで間違いなかったかなぁと、よく感じます」

●本当に僕もお世話になりました(笑)。曲的には本当にいい曲ばかり提供してもらって。脇役的な曲も素晴らしいですよ。
「まぁどういうターゲットにするかによって、脇役と主役も変わってくる。ライヴでノリたい人は『WAITING AT THE BUSSTOP』が主役だったりするから。でも自分ではそうだな〜、名脇役みたいなのは楽しめるかな。あの、役割が違うんだよね。たとえば「Vain dog(in rain drop)」とかは、ヘッドホンで聴いたりすると音響的に素晴らしかったりして。「WINNING COME BACK!」とかは、そこに重きを置いてるというよりは、ライヴで活きる曲だと思うし。それぞれ全部武器なんだけど、その武器が違うというか。いろいろ脇役の楽しみ方があって、うまくまとまってるような感じがする」

●ちなみに僕は「Vain dog(in rain drop)」が一番好きなんですけど。
「あ〜。『Vain dog(in rain drop)』好きね。うん。いいのができた。おもしろいのができた(ちょっとうれしげ)」

●ピロウズの魅力が詰まってますよ!
「たぶん、似てる曲がない感じがするし、あと歌詞が『Monster C.C』とかもそうなんだけど、久しぶりに短編小説的な歌詞で、そういうのはしばらく書いてなかったから。もうちょっとストレートに僕というキャラで、日常生活が見えるような曲が多かったんだけど、久しぶりにショートストーリー的で気に入ったものができて、嬉しかったんですけど」

●ギターが切ないっていうか、良かったですね。リフが繰り返されていくあたり。
「微妙な危ういやつでしょ(笑)。でも、総合的な印象でポップになって良かったかなっていうか。ただストレンジなのもイヤだし、歌がポップなのも誰かがやってるし、ちょうどいいところを探れた曲だと思う」

●“ポップ”という感じの曲も、必ず含まれていると思うんですけど。
「基本的には俺は全曲“ポップ”だと思ってるんだけど、“ポップ”という言葉の捉え方が難しいと思う。ただ“ポップが好きですか”って言われたら、“好きです”って絶対即答するね。“ポップ”なものは好きだね」

●“ポップ”って何ですかね。言葉では言いづらいと思うんですけど。

「あのね、ひとつの条件としては、普遍的なもの! 要するに名曲だよね。時代とともに、あんまり変わらないもの」

●ビートルズ的なもの?
「そうだね〜。そういうものが“ポップ”だね。みんなが誤解するのは“ポップス”と交えるんだよね。だから弾けてる“ポップ”というのは、“ポピュラーソング”とか“大衆的である”というものとごっちゃになってるんだけど、たぶんそうじゃないんだな〜、語源は。で、“大衆的なもの”は、普遍的じゃないのが、けっこう世の中にはあって、今はいいけど大人になったら聴かないとか。それは、ソフトだったりマイルドだったりするだけであって、“ポップ”ではないんだよね。全然普遍的ではないっていう。僕が言ってるのは、そうではないんだよ。“ポップソング”というものは、時代が変わっても色褪せないものなんだよね。’50年代だろうと’60年代だろうと、企画もんじゃないっていうか。だから、誤解を恐れずに言えば、ニルヴァーナはすごくポップだね」

●あー、僕もそう思います。

「ポップというか、ポップセンスがあるね。ポップではないけど、ポップセンスは天才的にありますね。そういう使い方として、“ポップ”が好きなんだよね」

●そういう“ポップセンス”みたいなものを1曲1曲必ず折り込めるようにしてる感じですか?
「してるというか、好きだからそっちにばっか向かうからね、どっちにしろ」

●基本的には、ジャンル分けするわけではないんですけど、ピロウズはロックバンドですよね。

「まあ、ロックバンドだね」

●中でも、そういうポップ的な要素が多く詰まっているっていう捉え方を、僕はしてるんですけど。
「そうだね。僕はものすごくポップ好きだからね。真鍋君とシンイチロウ君はもう少しロックだけど…。バンドとしては、ロックバンド。でも僕は、あんまりロックンロールのセンスはないね。それを聴いて育ってないから。なにせ、僕はスタンダードで一番好きなのは、サイモン&ガーファンクルなので、ロックンロールよりもそっちなんだよね」

●そういう聴いてる音楽って影響するんですかね?

「しちゃってると思うよ、ものすごく。影響受けることは恐れないし」

●その中でもピロウズらしさみたいなものを出せるのは、ずっと前から?

「いや、それはね、努力することじゃないんだ。出せるか、出せないか。出せる人間か、出せない人間か。周りがどう思ってるかというのは、努力することではないんだな。
 つまり、オリジナリティを出そうとか、人がやってないことをやろうとか思って、そういうアイディアを盛り込んだ曲に、自分が愛情を持てるかってこと。そうすると、けっこう難しいんだよね。頑張った結果 、意外と評価も受けずに悲しい思いをしたりしてたんだけど、今はそうではなくて、ただやりたいことをやって、マイブームがあったらマイブームを使って、憧れたものを、フィルターを通 して、ピロウズとしてプレイする。それを周りがどう思うかというのは、委ねているところがある。“これがオリジナリティなんだ! どうだどうだ!”って、能書きばっかり偉そうだって、“でもこれって何とかじゃん”って言われるか言われないかなんだよね。そういう部分があっても、ピロウズにはピロウズの良さがある、それは私はココ、僕はココとか、バラバラでもいいんだ。それはこっちが張り切ることじゃない。張り切ったことがあるんだもん、でもダメだった。その曲に愛情が注ぎ込めなかった。
 一番わかりやすいのが“誰もしたことがない髪形をしよう!”と思うと、カッコ悪いのしか残ってないんだよね。横モヒカンとか(笑)。普通 にかっこいいと思うものが、もう残ってなかったりするんだよ。だから、したいことをして、似合ってりゃーいいんだよ」

●新しいことをやろうとしても、もう、だいたい誰かが出してるっていうことですね。
「うん。どっちかっていうと、ファッションに関しても音楽に関してもカルチャーに関しても、’90年代に入って、これだけ細分化されてきて、何をどのタイミングでチョイスするかっていうのが、その人のオリジナリティであると思う。新しいものを目指すっていうのは、ハイブリッドなものを組合わせてることなんで、そこで、今これやるとおもしろいよねっていうような感覚がまだ残ってると思う。60年代・70年代・80年代は、それぞれカラーが強くあったと思う。90年代はそれをミックスしてわけわかんなくなった。そして後半からは、ほんとチョイスする、ハイブリッドなものを掛け合わせるようになったね。  何か残されているとは、もう思わないなー。でも、もちろん新しい音楽は必ずあるけどね。でも、それは感じ方として、“意外となかったよね”っていう。でも、それもタイミングなんだよ。10年前に出したら、そう思わないものもあるから」

●ありますね。確かに。

「今やるということが、重要なんだよね」






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