お互いやりたいことが、すごくはっきりと
あったから“一番やりたいことをやろうよ”って

●まずは結成の経緯からですが、2人が在籍していたジャックナイフは、解散とか活動休止といった告知をしたわけじゃないから、復活の時を伺っているような感じのまま、知らない間に自然消滅していったという印象なんですよ。ジャックナイフの活動が止まってブラッデストサキソフォン(以下、ブラサキ)を結成するまでに、何年ぐらいのブランクがあるんですか?
伸太郎
「止まってから1年経ってないですね。3ヶ月とか。ちょうど“とりあえず仕事しなきゃ”って感じで(笑)」
Coh「やっとバイトできる、って(笑)」
伸太郎「家電メーカーの修理を一緒にやって、そこで修理しながら、どんなバンドをやろうかって、ずっとしゃべってて。話してる時間が長いから、ものすごく長い時間に感じてるんですけど。で、とにかく始めちゃおうってライヴを決めちゃって。たぶん、そのバイト始めたのが11月ぐらい」
Coh「97年の10月末ぐらいで、ジャックナイフの最後のライヴが11月3日ぐらいだったんだよ」
伸太郎「あ、そうだ! 俺、次の日休んだんだ(笑)」
Coh「俺は出たんだけどね(笑)」
伸太郎「だから秋口に活動が終わって、翌年の1月に初めて顔合わせみたいな感じでスタジオ入って、4月4日とかに一発目のライヴを自分たちの企画でやりまして」
●ジャックナイフの事実上のラストライヴが終わって、その頃には多少暖めていた構想を実現しようとして、すぐに動き出したんですよね。この2人でというのは大前提にあったんですか?
伸太郎
「ありました。やっぱり、音楽的に一番噛んでたんですよね。だから、お互いやりたいことが、すごくはっきりとあった。そこで、すごく話をして“一番やりたいことをやろうよ”って。もちろん前のバンドがまたやるのであれば、それはそれでやる気はありましたけど。で、基本はジャズなので、ある程度の演奏力がないといけないしってことで、11月3日以降からちょこちょこやり始めた感じですね」
●伸太郎さんは、そもそもジャズが好きでサックスがやりたくて、とりあえずブルーノートにバイトに行ったという話を覚えてるんですけど?
伸太郎
「ブルーノートじゃなくて、ピットインですね」
●ピットインか。六本木でしたか?
伸太郎
「そうですね。先日、なくなりましたね。たまたまスケジュール表を見たら“今までありがとうございます”って。でも今考えてみると、六本木ピットインというハコのジャンルっていうのは好きなジャンルではなかったんですけど、“サックスやるのならジャズでしょ、ジャズだったらピットインでしょ”って感じで。で、新宿にもあるというのは知らなかったから、六本木のほうに行って“やらして”って(笑)」
●その時は、まだサックスを買っていない?
伸太郎
「アルトサックスを持っていましたね。休み時間に倉庫とかで練習させてもらうという約束で、入れてもらったんです」

子供の頃からジャズが好きで
全然ロックを聴いてないんですよ

●Cohさんは、ジャックナイフに加入した当時から上手い人というイメージがあったんですけど、学生の頃に吹奏楽か何かやってたんですか?
Coh
「小学校と中学校でマーチングバンドみたいなものをやっていて、結構いい環境だったんですよね。で、楽しくやってたんですけど、高校でも楽器をやりたくて、ブラスバンド部があったんですけど気持ち悪い人ばっかりだったんですよ(笑)。やってくれってしつこく言われたんですけど、それはできない、って(笑)。でも、自分の楽器は持ってなかったんです。だから高校の時は、楽器はやらずに遊んでばっかりいましたね。で、大学に入ってバイトのお金が少し良くなるじゃないですか(笑)。それで買ってみようかなって思って、買って練習していました」
●その時は、すでにジャズにハマッてたんですよね?
Coh
「僕は子供の頃からジャズが好きで、全然ロックを聴いてないんですよ」
伸太郎「小学校4年の時にカウント・ベイシーのレコードを聴いて衝撃を受けたって言ってますからね(笑)」
●どういう環境なんですか、それは(笑)。親の影響とか?
Coh
「親の影響は、ないですね」
●自発的に?
Coh「話すと細かいのはいろいろあるんですけど、そういうのが好きだったみたいですね」
●すごい端折り方ですね(笑)。
Coh
「聞きたくねぇかなと思って(笑)」
●だからジャックナイフの初期のステージでも、ロックやってた人じゃない雰囲気がプンプンでしたもんね(笑)。
伸太郎
「そうですね。まだジャックナイフがスーツを着始める前から、入ってきた時にジャズマンが着るようなすごくいいスーツで登場してきたので、ワンランク豪華な人っていう感じはしましたよね(笑)」
Coh「学生の時は、自分がそういうライヴをやるとは思ってなかったですもん。レコードを買いに新宿とか行くじゃないですか。で、ロフトのあたりを通 ると、そういう(ロックの)人たちがたむろしていて、“いるんだよな、こういう人たち”って(笑)。そしたら、自分が出るようになっちゃって。でも、ロックじゃない人が急にロックになろうとすると、カッコ悪いじゃないですか。ただ、ダサいのだけは嫌だったから、何とかいい接点を見つけて工夫していましたね」

“めちゃめちゃロックっスね”って言われても
否定しないけど、“それがジャズなんだよ”
っていうのが俺らの言い分。

●そういったわけで、もともとやりたかったジャズを2人でやろうってことですよね。そこで、自分たちが一番カッコいいと思うことをやろうぜって時に、コンセプトというかキーワードみたいなものはあったんですか?
伸太郎
「キーワード的には、最初ジャンプですね。ジャンプをやろう、って。僕らが言っていたジャンプっていうのは、もちろんジャンルとしてのジャンプもあるんですが、結構広い意味で“気合いの入った音楽”っていうんですかね。気合い入れてホーンを吹いているので。しかもバラードとかの小さい音の時でも、集中して汗ダラダラかきながら吹いている、そういうのをひっくるめてジャンプって言ってたんです。そんな音のパフォーマンス的なところとか圧倒的にエネルギッシュなところとか、そういうジャズをやりたいっていうのがありましたね。
 だから、もともとやりたかったジャズをっていうよりは、ジャックナイフとかでライヴを重ねていったり、曲を演奏するためにまつわってくる聴く音楽だったりを経ていって、広い意味でのジャンプっていうのに辿り着いた、というのが正解でして。で、俺たちのジャンプっていうのをとにかくやろう、っていう流れですね」
●それは、たとえばライヴならではのエネルギッシュな部分とか、気持ち的にはロックとそんなに変わらない?
伸太郎
「そうですね。わりと僕ら的には“それが実はジャズなんだよ”って感じはあるんですけど。そうですね、ロックのスピリッツ的なところと同じじゃないですか」
Coh「たまに言われるんですよね。僕らジャズですって言ってても、お客さんとかで気に入ってくれた人とかは“めちゃめちゃロックっスね”って。それは全然否定しないんですけど、それがジャズなんだよっていうのが俺らの言い分なんだよね」
伸太郎「否定しないのは、その人がものすごく褒め言葉で言ってくれてるというのもわかるし、俺たちはジャズというものを、変に手抜きしたり、簡略化したり、逆に小難しくしちゃったりとか、そういう作業は一切しないので、僕たちが思ってる等身大のジャズをやってますし、そこには徹底的に自信を持ってるので、人にロックだねって言われても絶対に揺るがない」
●その人たちが知らないだけであって、という話ですよね?
Coh
「言葉が違うだけで、“めちゃめちゃジャズだね”って言われてるのと一緒だと思うんですよ」
●たとえばバッドボーイズロックのルーツだったら、ジョニー・サンダースからキース・リチャーズに遡って、さらにブルースマンのライトニン・ホプキンスとかサニー・ボーイ・ウィリアムスンあたりまで遡れると、僕は思うんですよ。ジャズメンも同様で、めちゃくちゃ不良だったりキ○ガイな人もいたわけじゃないですか。でも一般 的に、BGMで耳にしてどんな音楽か何となく知ってる程度だと、ロックに通 じるものを感じたりはしにくいですよね。だからロックだねって言われても、実はそれがジャズなんだよっていうのは、もっと知ってもらいたいと思いますね。ロックをやってた人たちがジャズをやってるからロックっぽいんだよねっていうこととは、全然違うわけで。そこは、僕としてはしっかり伝えたいところです。
 一般的に、モダンジャズ以降のジャズって敬遠されがちなのかもしれないですけど、それ以前のものってすごくエンターテイメントで面 白いですよね。でも今って、そういうものもフラットに聴ける環境になってきたと思うんですよ。
伸太郎
「そうですね。また一時代経てっていう感じはありますよね。僕ら的にジャズが損しているところは、そのモダンジャズ以降の人たちがあまりにダサ過ぎる。ちょっと臭そうな(笑)、そういう人たちのことは放っといていいんだよ、とは思いますけどね」
●確かに若干フュージョン系入ってるような人も含めて、ファッションにこだわってなさそうな人っていますよね。ケミカルウォッシュのジーンズ履いてそうなイメージ(笑)。でも本来はスタイリッシュなものですよね。黒人の人でも、すごくオシャレな人が多かったし。
伸太郎
「で、また黒人のオシャレって、見てるとカッコいいですよね」
●そういう写真って僕も保存しているんですけど、そのまま真似して着てもカッコ良くならない気がして(笑)。