●1年3ヶ月ぶりの新曲ですが、作品作りに対して以前と変化はありましたか?
「とりあえず、マイペースでやろうって考えてましたね。余計なことを考えたりするのが、苦手だったりするから(笑)。そういうのに惑わされないように、ずっとペースを守ってやってきたんですけど。空いた1年も、煩わされるようなことは1コもなかったので、逆にリラックスしていて。そういう意味で、今度の曲っていうのは、なんていうのかな。新たなデビュー曲というか…」
●“第2章の始まり”、という感じですか?
「そんな感じですね」
●気持ちが新たになったことで、楽曲にも変化は出ているんでしょうか?
「やってること自体は、そんなに変わってないつもりなんですけど、第2章なので、わかりやすい、ストレートな感じにしたかったというのはあります。伝わりやすい感じで、あまり趣味に走らず、みたいな(笑)」
●趣味に走ると、どうなってしまうんですか(笑)?
「いや〜。忙しい感じに(笑)」
●激しい感じの曲になってしまうんですか?
「いや、テンポは遅いんですけど、気持ちが先走るというか。う〜ん、どうなるんでしょうね? 趣味に走っていくと、ドンドン手直しを重ねてしまって、難しいものになっていったりとか…」
●周りに止められたりする?
「たまに(笑)。でも、今回は最初に出てきたものを、そのままキレイに作ったかなって」
●歌詞を読んでもわかるし、資料のコメントにも書いてあるんですが、この「さよならしてあげる」は、“ポジティヴな失恋の歌”だと。この曲のバックにある、気持ちや考えを聞いてもいいですか?
「これは素敵な恋愛をしていただくための、応援歌なんです」
●それはすごくわかるかも。勇気づけられる感じがしますから。 上田さんがこういう恋愛の曲を書くとき、自分の体験を書くことが多いですか? それとも、そういう状況を想像して書くことが多いんですか?
「シチュエーションは全然体験ではないんですけど…。歌詞にもあるように、“その話聞いたよ、さっき”とか、ぶっきらぼうに言われたりすることはあるワケで…。そのとき、“なんか今までと違うな”とか思ったりすることも、やっぱりある(笑)。そういうのは体験であって。私の場合は(曲のように)別 れたりはしなかったですけど。だからその言葉で“ちょっとヤバイな”と思って、自分を軌道修正したりしたことはあったんですよ。でもたぶん、みんなそういう細かい相手の仕草が気になるのは同じで。微妙な関係のときに、そういうのがガツンとあったら、それが決定打になって別 れてしまうこともあるわけじゃないですか。そういうのは見てきたから、それと自分の体験をミックスさせて、ひとつのショートストーリーとして作ったんです」
●そういう形で、歌詞を作ることが多いですか?
「そうですね。自分が“そうだ、そうだ”と思えなかったら、詞にはなかなかできなかったりするので。ある程度は、自分の中からしか出てくるものしか書けない…。っていうのを考えると、まあ、体験かなって感じですね」
●上田さんだったら、この曲に出てくる女性のように、自分から別 れることを選ぶと思いますか? 私だったら、悔しいから先に言ってしまうだろうなと思ったんですよ。恋愛で別 れる、別れないって、言ったモン勝ちみたいな部分もあるじゃないですか(笑)。
「そうなんですよ、絶対、言ったモン勝ちなんですよ。振られるのはイヤじゃないですか?」
●イヤです(笑)!
「(笑)。フラれたりすると、あとを引きそうじゃないですか。だから“絶対にこっちからフッてやる!”というのは、私のテーマ」
●先に言われたほうが、辛いですよね。置いていかれた、みたいな気持ちになってしまうし(笑)。
「そうなんですよね。誰かを送って行ったとき、去っていく人は楽チンだけど、送っていって、また家に帰る私っていうのは寂しいじゃないですか。そういうのは、日常生活にもあるんですよ。こだわってるワケではないんですけど、自分から言わないと、後を引くのは目に見えているので(笑)」
●この曲に共感を覚える部分はなんだろうと考えたとき、理想的な強さを歌っていないところかなと思ったんですよ。もちろん理想的な強さを歌っている曲もあって、それも素敵だなとは思うんですけど、ある意味それは理想であって、誰もがそうなれるわけではないですよね。でも、この曲にある強さって、誰でも持てる強さじゃないですか。リアリティのある強さのほうが、共感できるんじゃないかと。
「それはありがたいです」
●それに、この曲通りのシチュエーションだけじゃなくて、別 の状況に置き換えることもできますよね。
「そうなんですよね。そういうふうに、皆さんが(自分の状況に)置き換えてくれるのが理想」
●そのあたりを狙ってたりもします?
「いや、あまり考えたりはしてないんですけど。ガツンと“頑張って!”と言われても、頑張れないタイプなので…。そのあたりは、あまのじゃくだったりもするんで(笑)。だからそういう曲もあまり聴いたことがなかったし、自分が感情移入する曲って、こういう感じの曲が多かったから」
●演奏や曲の面で、新しい試みはありましたか? 26人編成のストリングスによる演奏も行なったんですよね。
「26人のストリングスは初です。ビックリしました(笑)。すごいなって。(最初は)もっとアカデミックになるのかなって思ってたんですよ。いっぱい入れれば入れるだけ、そういうふうになるのがちょっと怖かったんですけど。そういうふうにはならずに、良いバランスになりました。でも、その場は圧巻でしたよ」
●緊張しました?
「もう、見てるだけで緊張しましたよ〜(笑)。ストリングスを録ってるときは、皆さんすごく集中して譜面 と戦ってるじゃないですか」
●でもそういうものを見て、感じたこととか、発見もあったんじゃないですか?
「そうなんですよね。たとえば歌を録ったりするときに、ちょっと違ったことをやったとして、“あ、これは面 白いから残そう”とかいう場合もあるんですけど、そういう世界じゃないじゃないですか。譜面 をその場の集中力で、絶対間違わないように弾くっていうのは、面白くもあり、素晴らしいなって」
●上田さんが恋愛の歌を歌うことは、聴く側に癒しをあげたいという気持ちが強いですか? それとも、歌うことで自分の中の気持ちが消化されて、癒されるという部分が大きいですか?
「そういうのはあまり意識したことはなかったんですけど、それが癒しになってるんだったら、こんなに良いことはないな〜と思います。でも、曲を書いたりとか、詞を書いたりするときに、人にこうしたいとか考えることはないかな。う〜ん、どっちなんでしょう? 消化型かな、どっちかと言えば(笑)。でも、ずっとそういう感覚でやってきたんですけど、もしかしたら今回の曲は、すこし聴いてくれる人のことを考えた、初めての歌かもしれないなという気が。趣味に走らなかったというのもそうだし、メロディにしても、入っていきやすいものにしたし…。(そういう)わかりやすいものをテーマに作ったということを考えると、もしかしたら聴いている側のことを考えたのかな。奇をてらったところは何一つやっていないはずで」
●この曲をきっかけに、今後、ある意味で聴く側のことを考えて作る曲が、多くなったりすることもありますか?
「う〜ん」
●そのときになってみないと、わからないですよね。
「そう(笑)。でも、もうちょっと考えてもいいかな? っていう感じはあります」
●こんなふうに聴いて欲しい、というところはありますか?
「朝イチに聴くような曲ではないですね(笑)」
●(笑)。時間指定しちゃいます?
「日曜日の8時くらいとか(笑)。前に、シンデレラエクスプレスとかあったじゃないですか。日曜の最終の新幹線で、恋人同士が別 れていくっていう」
●あ〜、ありましたね。でも曲は、ポジティヴですからね。
「もちろん! 未練がタラタラしている恋は、いけないなんて思うので。みんな幸せになってほしいですから。“幸せなカップルを作ろう運動”をしようかなって(笑)」



うえだまり/大学在学中からバンド活動を始め、キーボードを担当。卒業後は、作曲家として多くのシンガーたちに、楽曲を提供する。ミュージシャンである江口信夫との出会いをきっかけに、自らもシンガーとして活動を始め、98年9月にシングル「伝えたい」でデビュー。これまでに6枚のシングルと、3枚のアルバムをリリースしている。